出産アイク

(痛い…苦しい……こんなの認めたくなかったのに…っ
だって俺はーー) 

子を孕み、出産した。

男だった自分が女へと変えられ、犯され、それを否定していたすべてがこの事実によって完全に崩れ去ってしまった…。
 アイクは想像を絶する痛みに解放されたことと、それによる絶望で意識が混濁していた。
胎盤を排出しないまま脱力し、産まれた赤子が産声をあげていても応えてやることができない。先程からアイクのそばで見守っていた”漆黒の騎士”と呼ばれるその男は、自らと同じ黒髪の”印の付いた”わが子が放り出されたままなのを見るや、渋面になりながら見かねて子を母の腕によせてやる。

 喉を笛のように慣らし、息も絶え絶え。
焦点のさだまらない瞳でボロボロと涙をためているその姿。こちらの顔を認識できていない。鋭い眼光で殺意をもって睨みつけるか。何をしても苦痛に堪えるように、快楽すら素直に受け入れることをしなかったアイク。
産む間際、痛みに逃れたいばかりにこちらに助けを求め哀願する表情をむけたことをふと思い出し。
男はその時、その一瞬、自分が必要とされていたことに高揚感を得ていた。

 

 アイクの恥部から、艶のある鮮やかな赤い果実が実っていた。
出産と同時に子宮が飛び出してしまったらしい。薬によって作りだされた女の姿。外見は成熟した姿をしていても膣内(ナカ)は未熟だった。
 外部からとびだしている膣壁をつかむと、子を抱えたアイクは弱々しげに反応し。男はその姿の哀れさに庇護欲を掻き立てられた。そしてある”好奇心”も。

 

必要とされていた高揚感でそそり立ってしまった己の一物でアイクの飛び出た子宮をおしもどしてやろうと考えていたのだ。

 ……それにはまず胎盤をどうにかしないと。
しかしアイクが脱力しているせいで腹を押してやっても一向に排出されない。押すたびに苦しそうな表情をするアイクが不憫に思えてしまうことと。焦らされ自分の好奇心が薄れていくことが惜しくなる。

 

しかたがない…ならばひとおもいに。
男はアイクの腹を愛おしそうにさすりながら何かを決意する。

「う…ぁ……」
やさしく撫でられる心地の良い感触に、アイクはかすかに意識をとりもどした。
 目の前には憎くて殺してやりたい男が手の届くところにいる。父の仇。自分を女に作り替えた張本人。暗躍に身をつつむその男、漆黒の騎士。
しかし鎧を脱ぎ捨てた男の姿は……亡き父と面影を重ね、自身が惹かれていた宗主国の将その人だ。
何度もつきつけられてきた事実と整った男の顔が時折見せる優しい表情にアイクは胸を締め付けられる。

「ゼル…ギ……ウス…どうし…て」

あんたがーー
その言葉をいいかけると男は次の瞬間
アイクの下腹に拳をふりあげた。